さてぃ、『大川敵討(ううかあてぃちうち)』ぬ見所(みいどぅくる)、うんにゅきてぃ来(ち)ゃあびたしが、見(ん)ちちゃる通(とぅう)い、芝居(しばい)ぬ手本(てぃふん)とぅんなたるびけえのあいびらな、民謡(ふぁうた、はうた)んかいん、響(ふぃび)ちょおいびいん。

うぬ一(てぃい)ちえ、
 名(なえ)得(い)いらっとおる前川朝昭作詞ぬ「兄弟小節(ちょうでえぐゎあぶし)」ぬ歌詞んかい「行逢(いちゃ)りば兄弟(ちょうでえ)、何(ぬ)隔(ひ)てぃぬあが」んでぃぬ歌詞ぬあいびいしが、『大川敵討』ぬ泊ぬ村原んかい言(ゆ)る詞(くち)んかい「ああ、いきやへは、兄弟、何(のを)うち隔のあが」(口語音=ああ、いちぇええわ、ちょうでえ、ぬ、ふぃだてぃぬあが)から抜(ぬ)じぇえるむんやいびいん。

また、うぬ二(たあ)ちえ、
 くりんまた名ぬある端歌やいびいしが、伊良波伊吉作詞ぬ「情(なさき)の歌(うた)」んかい、「昔(んかし)、聖者(ふりむん)ぬ言(い)ちぇる事(くとぅ)守(まむ)て、義理(じり)てしや何(ぬ)やが」んでぃあいびいん。くりん、『大川敵討』ぬ谷茶(たんちゃ)ぬ詞)んかいある「昔ふれ者の言ちゃること守て、浮世暮されめ」(口語=んかし、ふりむんぬいちゃるくとぅ、まむてぃ、うちゆ、くらさりみ)から抜じぇえるむぬやんでぃち、分(わ)かやびいん。

 聞(ち)ち慣(な)りたる詞がやたら、あらんでえ、組踊(くみをぅどぅい)らあさん無(ね)ら詞やんでぃが思(うむ)とおみせえたらあ、舞台(ばんく)からうぬ詞ぬ聴(ち)かりやびたくとぅ、座(ざあ)ぬ人(ちゅ)ん達(ちゃあ)から笑(われ)え声(ぐぃい)ぬ湧上(わちゃ)がやびたん。

 うんな事ん、『大川敵討』ぬ詞ぬ話し言葉(くとぅば)んかい近(ちか)さくとぅどぅやら筈(はじ)んでぃ思(うむ)やびいん。
 
続ちゅん。

【語句】
民謡んかい響ちゃる『大川敵討』=民謡にも影響した『大川敵討』
さてぃ、『大川敵討』ぬ見所、うんにゅきてぃ=さて、『大川敵討』の見所を述べて、
来ゃあびたしが、見ちちゃる通い、芝居ぬ手本とぅん=きましたが、見てきた通り、芝居の手本とも、非丁寧文「来ゃしが~」。
なたるびけえのあいびらな=なったばかりでありませんで、非丁寧文「~びけえのおあらな」。
民謡んかいん、響ちょおいびいん=民謡にも影響を与えています。非丁寧文「~響ちょおん」。
うぬ一ちえ=その一つに
名得いらっとおる前川朝昭作詞ぬ「兄弟小節」ぬ=有名な前川朝昭作詞の「兄弟小節」の
歌詞んかい「行逢りば兄弟、何隔てぃぬあが」んでぃぬ=歌詞に「出逢えば兄弟、何の分け隔てがあるものか」との
歌詞ぬあいびいしが、『大川敵討』ぬ泊ぬ=歌詞がありますが、『大川敵討』の泊の、非丁寧文「歌詞ぬあしが~」。
村原んかい言る詞んかい=村原に言うセリフの
「ああ、いきやへは、兄弟、何うち隔のあが」=「ああ、出逢えば兄弟、何の分け隔てがあるものか」、註「うち隔て」の「うち」は強調を表す接頭語。語句によっては「打ち」を当てることもあります。
(口語音=ああ、いちぇええわ、ちょうでえ、ぬ、ふぃだてぃぬあが)
から抜(ぬ)じぇえるむんやいびいん=からとったものです。非丁寧文「~むんやん」。
また、うぬ二ちえ=また、その二つに、
くりんまた名ぬある端歌やいびいしが=これもまた、有名な民謡ですが、非丁寧文「~端歌やしが」。
伊良波伊吉作詞ぬ「情の歌」んかい=伊良波伊吉作詞の「情の歌」に
「昔、聖者ぬ言ちぇる事守て、義理てしや何やが」=「昔、糞真面目な者が言った事を守って、(では一体)義理とうものは何なのか」、注:「ふりむん」は「気狂い、バカ者」という意味の他、「バカ正直、糞真面目」という意味もあるので、作詞者は「聖者」を当てているのでしょう。
んでぃあいびいん=とあります。非丁寧文「んでぃあん」。
くりん、『大川敵討』ぬ谷茶ぬ詞んかいある=これも、『大川敵討』の谷茶のセリフにある
「昔ふれ者の言ちゃること守て、浮世暮されめ」=「昔、バカ正直者の言った事を守って、俗世界で暮らしていけるか」
(口語=んかし、ふりむんぬいちゃるくとぅ、まむてぃ、うちゆ、くらさりみ)
から抜じぇえるむぬやんでぃち、分かやびいん=からとったものだとわかります。非丁寧文「~分かるゆん」。
聞ち慣りたる詞がやたら、あらんでえ=聞きなれたセリフだからだったのか、あるいは、
組踊らあさん無ら詞やんでぃが思とおみせえたらあ=(格調高い)組踊らしくないセリフだと思ってだたのか、非敬語「~思とおたらあ」。
舞台からうぬ詞ぬ聴かりやびたくとぅ、座ぬ人ん達から=舞台からそのセリフが聞こえましたので、聴衆から 非丁寧文「~聴かりたくとぅ」。
笑え声ぬ湧上がやびたん=笑い声が沸き起こりました。非丁寧文「~湧上がたん」。
うんな事ん、『大川敵討』ぬ詞ぬ話し言葉んかい=そんな現象も『大川敵討』のセリフが(今の)話し言葉に
近さくとぅどぅやら筈んでぃ思やびいん=近いからなのだろうと思います。非丁寧文「~思ゆん」。