アジアん合あち世界中(しけえじゅう)、旅(たび)し歩(あ)っちょおたいびたるインジリイぬ博物学者フランシス・ヘンリー・ヒル・ギルマード(1852-1933)や、琉球(るうちゅう)んじ、見(ん)ちゃる風景(ちいち)ぬ一(てぃい)ちとぅしち、下(しちゃ)ねえぬ記事(ちじ)、書(か)ち残(ぬく)ちょおいびいん。(註:『青い目がみた大琉球』於(をぅ)とおてえ、「ギヤマード」なとおいびいしが、いんじりい口なかいや、Guillemard)。

「那覇(なあふぁ)ぬ渡口(とぅぐち)=津口(ちぐち)ぬ、山丈(やまだき)、木(きい)ぬむさありとおる奥武山(おう)ぬ島小(しまぐぁあ)、走(じゃ)い過(くぁあ)あしいねえ、ふぃるましい眺(なが)みんかい、走(は)い行(い)ち合(ゃ)やびたん。
 幾人(いくたい)がなぬ島人(しまんちゅ)ぬ山(やま)ぬ頂(ちぢ)ぬ空地(んなぢい)んかい揃(すり)てぃ、西(いりい)、向(ん)かてぃ、祭(まちい)がやら、何(ぬう)がなぬ拝(をぅが)ん事(ぐとぅ)そおいびいたん。
 太陽(てぃいだ)あ、落(う)てぃいがあ回(ま)あてぃ、天(てぃ)ぬんかいや、大風(ううかじ)知(し)らする高雲(たかぐむ)ぬ重(かさ)なとおいびいたん。
 目光(みいふぃちゃ)らさる落(う)てぃ太陽(でぃいだ)、くさあなち、人(ちゅ)ぬ影(かあがあ)ぬ、腕(けんな)、ようんなあ、手振(てぃふ)いし、舞(もお)やあに、今日(ちゅう)ぬ日(ふぃい)とぅ振別(ふやか)りさびいん。
 舞(も)おやあぬ後(くさあ)んかいや、幾(いく)たいがなぬ男(ゐきが)ぬ蛇皮(じゃふぃ)張(は)てえるギター持(む)っち、聴(ち)ちゃる事(くとぅ)ん無(ね)えらんふるましい節(ふし)、弾(ふぃ)ちょおいびいたん。
 舞おやあ達(たあ)や、一人(ちゅい)なあ替(が)あるうし舞(も)おやびいん。
 なちかさる節とぅふるましい踊(をぅどぅ)いんかい、耽(ふ)きてぃ、夜(ゆう)ぬゆっくぃゆしん、忘(わし)りてぃ、仄々(ふりぶりい)とぅ夢(いみ)ぬ如(ぐぅとぅ)どぅあいびいたる。
 踊(をぅどぅ)いばんくぬ幕(まく)お、閉(く)うらりやびたん。
 やいびいしが、あながち思(うみ)なかい、満(み)っちゃきらっとおる我旅(わあたび)ぬ中(なあか)うてぃん、あぬ落(う)てぃ太陽(てぃいだ)なかい、照(てぃ)らさっとおたる琉球(るうちゅう)ぬ港(んなとぅ)於(をぅ)とおてぃぬ一幕(いちまく)ぬ踊い(をぅどぅ)いや、かわてし、肝底(ちむすく)んかい強々(つうづう)とぅ、刻(きざ)まっとおん。『青い目が見た大琉球』(ニライ社)。

 さてぃ、うん如(ぐとぅ)うし、ギルマードぬ見(ん)ちゃるむのお、何(ぬう)がやびいらたら。毛遊(もうあし)びがやいびいたら。

【語句】
アジアん合あち世界中、旅し歩っちょおたいびたる=アジア含め世界中を旅した 非丁寧文「~歩っちょおたる」。
インジリイぬ博物学者フランシス・ヘンリー・ヒル・ギルマード(1852-1933)や=英国の博物学者フランスシス・ヘンリー・ギルマードは、
琉球んじ、見ちゃる風景ぬ一ちとぅしち=琉球で見た風景の一つとして、
下ねえぬ記事書ち残ちょおいびいん=次のような記事を書き残しています。非丁寧文「~残ちょおん」。
(註:『青い目がみた大琉球』於とおてえ、「ギヤマード」なとおいびいしが、いんじりい口なかいや、Guillemard)。=(註:『青い目が見た大琉球』では「ギヤマード」であるが。英語表記はGuillemard)。
注:原文は非丁寧語ですが、ここでのうちなあぐちは丁寧語にしました。
「那覇ぬ渡口=津口ぬ、山丈、木ぬむさありとおる=那覇の港入口のうっ蒼と木の繁る
奥武山ぬ島小、走い過あしいねえ=奥武山の小島を過ぎると、
ふぃるましい眺みんかい、走い行ち合やびたん=不思議な場面にぶつかった。非丁寧文「~走い」。
幾人がなぬ島人ぬ山ぬ頂ぬ空地んかい揃てぃ=数人の島民が山頂の空地に集まり
西、向てぃ、祭がやら、何がなぬ拝ん事そおいびいたん=西を向いて祭か何か宗教儀式を行っていた。非丁寧文「~事そおたん」。
太陽あ、落てぃいがあ回あてぃ、天ぬんかいや=太陽は今まさに沈まんとし、空には、
大風、知らする高雲ぬ重なとおいびいたん=暴風を告げる乱雲が層を形成していた。非丁寧文「~重なとおたん」。
目光らさる落てぃ太陽、くさあなち=まぶしい夕陽を背景に
人ぬ影ぬ、腕、ようんなあ、手振いし、舞やあに=人影がゆっくり腕をくねらし、踊り、
今日ぬ日とぅ振別りそおる風儀やいびいたん=今日の日に別れを告げる。非丁寧文「~風儀やたん」。
舞おやあぬ後んかいや、幾たいがなぬ男ぬ=踊り手のうしろでは数人の男が、
蛇皮、張てえるギター持っち、聴ちゃる事ん無えらん=蛇皮を張ったギター(三味線)を手に取り、耳にしたことのない
ふるましい節、弾ちょおいびいたん=不思議な音楽を奏でている。非丁寧文「~弾ちょおたん」。
舞おやあ達や、一人なあ替あるうし舞おやびとおたん=踊り手は次々に代る。非丁寧文「~舞おとおたん」。
なちかさる節とぅふるましい踊いんかい=哀調を帯びた音楽と怪しい踊りに、
耽きてぃ、夜ぬゆっくぃゆしん、忘りてぃ=心を奪われ、夜のとばりがおりてくるのも忘れ、
仄々とぅ夢ぬ如どぅあいびいたる=ゆめごこちの中にいた。非丁寧文「~如どぅあたる」。
踊いばんくぬ幕お、閉うらりやびたん=舞台の幕は下りた。非丁寧文「~閉うらったん」。
やいびいしが、あながち思なかい、満っちゃきらっとおる我旅ぬ中うてぃん=だが、私の思い出に満ちた旅の中でも、非丁寧文「やしが~」。
あぬ落てぃ太陽なかい、照らさっとおたる琉球ぬ港於とおてぃぬ一幕ぬ踊いや=あの夕陽の映える琉球の港の一幕の踊りは、
かわてぃ、肝底んかい強々とぅ、刻まっとおいびいん」=ひと際深く刻まれている」。非丁寧文「~刻まっとおん」。
『青い目が見た大琉球』(ニライ社)。

さてぃ、うん如うし、ギルマードぬ見ちゃゃるむのお=さて、このように、ギルマードが見たものは
何がやびいらたら=何だったのか。非丁寧文「~やたら」。
毛遊びがやいびいたら=毛遊びだったのか。