うちなあぐち日記

うちなあぐちえ 聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ

2014年02月

 ソチオリンピックんけえ終(う)わやい、うみなあくなとおいびいん。
 オリンピックぬ間(うぇえだ)あ、家組(やあぐな)ぬ夜長(ゆなが)とぅ、テレビ見(ん)じゅくとぅ、何(ぬう)がやら見(ん)だん人(ちゅ)までぃ、うたやびいさ。
 テレベぬインタビューんかい出(ん)じとおたる選手(いらびんちゅ)ぬ話ぬ中(なあか)んかい、「スリ抜ケル」んでぃゆる言葉(くとぅば)ぬあいびいたん。思(うび)らじに、うぬ言葉、うちなあぐちし、言(い)ち見(ん)ちゃれえ、でえじな、あながちさぬ言葉ぬ出(ん)じてぃ来(ち)ゃあびたん。「スリ抜ケル」んでえ「抜(ぬ)ぎ走(ば)い」でぃぬ意味(ちむええ)やいびいん。
 我(わあ)が童(わらび)ぬばすお、映画館(いいがくぁん)から流行歌(ふぇえうた)ぬ鳴(な)てぃ、来(ち)いねえ、まんぐらぬ童ん達(たち)が、門賃(むんちん)やあ持(む)っちぇえ居(をぅ)らなそおてぃ、いいくる映画館ぬ前(めえ)んかい揃(すり)いやびたん。
 うんにいや、いいくる要領(くう)ぬ良(ゆ)たさる童え、大人(うふっちゅ)がキップ渡する間(ゑえだ)なかい、大人んかい紛(まじ)りやあに、門口(むんぐち)ぬ側(すば)から「抜ぎ走い」さあに、暗闇(くらしみ)なとおる中(なあか)んかい、入(ふぇえ)りんち行(い)ちゃびたん。うりしみらん為(たみ)なかい、主(ぬうし)え、刀差(かたなさ)ち、門口んかい立ち、目(みい)や研矢(とぅじゃ)なち、童ん達見じゃあ見じゃあそおいびいたん。でえじなぬ竦(しか)あ小(ぐぁあ)やたる我(わん)ねえ、どぅくだら恐(うとぅる)さぬ、「抜ぎ走い」や一回(ちゅけ)ぬんちょおん、しいゆさびらんたん。
 うぬ代わい、弟(うっとぅ)とぅまじゅん、穴(みい)ぬふぎとおる壁(かび)とぅめえやあに、ちがるうさあに、すう見(みい)そおいびいたん。
 やいびいしが、諸(むる)豊かけえなてぃがやいびいらあ、「抜ぎ走い」する人ん居らんなゆしとぅまじゅん、「抜ぎ走い」んでぃゆる言葉ん使(ちか)あらんなとおいびいん。調(しら)びてぃ見(な)あびたれえ、うぬ言葉あ『沖縄語辞典』ぬんかいや載(ぬ)てえ居(をぅ)いびらん。
 今あ家(やあ)んじん、映画あ見だりゆい、ましやいびいんやあさい。

【語句】
ソチオリンピックんけえ終わやい=ソチオリンピックも終わってしまい、
うみなあくなとおいびいん=ほっとしていいます。非丁寧文は「~なとおん」。
オリンピックぬ間あ、家組ぬ=オリンピックの間は、家族は、  「家組」は「家人数」ともいいます。
夜長とぅ、テレビ見じゅくとぅ=夜遅くまでテレビを見るので、
何がやら見だん人までぃ、うたやびいさ=なぜか、見ない人まで疲れますよ。非丁寧文は「~うたゆさ」。
テレベぬインタビューんかい出じとおたる=テレビのインタビューに出ていた
選手ぬ話ぬ中んかい=選手の話の中に
「スリ抜ケル」んでぃゆる言葉ぬあいびいたん=「すり抜ける」という語がありました。非丁寧文は「~あたん」。
思らじに、うぬ言葉、うちなあぐちし=不意にその語を、沖縄語で、
言ち見ちゃれえ、でえじな=言ってみたら、とても、 「でえじな」は文例の意味では『沖縄語辞典』にはありません。
あながちさぬ言葉ぬ出じてぃ来ゃあびたん=懐かしい言葉が出てきました。非丁寧文は「出じてぃちゃん」。
「スリ抜ケル」んでえ「抜ぎ走い」でぃぬ意味やいびいん=「すり抜ける」は「抜ぎ走い」といういみです。非丁寧文は「~ぬ意味やん」。
我が童ぬばすお=私が子供の頃は
映画館から流行歌ぬ鳴てぃ、来ゃあびいねえ=映画館から流行歌が流れてきますと、  非丁寧文は「~来いねえ」。
門賃やあ持っちぇえ居らなそおてぃ=入場料は持ってないのに、
まんぐらぬ童ん達が、=周辺の子供達が
いいくる映画館ぬ前んかい揃いやびたん=だいたい映画館の前に集まってきました。非丁寧文は「~揃いたん」。
うんにいや、いいくる要領ぬ良たさる童え=あの頃は、だいたい要領の良い子は、
大人がキップ渡する間(ゑえだ)なかい=大人がキップを渡す間に
大人んかい紛りやあに、門口ぬ側から=大人に紛れ、木戸口に側から
「抜ぎ走い」さあに、暗闇なとおる中んかい=すり抜けて、暗闇になっている中に
入りんち行ちゃびたん=入り込んで行きました。非丁寧文は「入りんちんじゃん」。
うりしみらん為なかい、主え、刀差ち=それを阻止するために(映画館の)主は、
門口んかい立ち、目や研矢なち=木戸口にたって、眼光鋭く、  「研矢」は「銛(もり)」。「目や研矢なち」は「眼を銛にして、つまり眼光鋭く」。
童ん達見じゃあ見じゃあそおいびいたん=子供達を見回していました。非丁寧文は「~見じゃあ見じゃあそおたん」。
でえじなぬ竦あ小やたる我ねえ、どぅくだた恐るさぬ=とても臆病だった私は、とても怖くて、 「竦あ」は「竦む者」転じて「臆病者」。「竦(しか)ばくう」も同じ意味。後者は『沖縄語辞典』にはありません。
「抜ぎ走い」や一回ぬんちょおん、しいゆさびらんたん=すり抜けは一回もできませんでした。非丁寧文は「~しいゆさんたん」。
うぬ代わい、弟とぅまじゅん=その代わり、弟と一緒に、
穴ぬふぎとおる壁とぅめえやあに=穴の空いた壁を捜して、
ちがるうさあに、すうみそおいびいたん=交替で覗き見をしていました。非丁寧文は「~すうみそおたん」。
やいびいしが、諸豊かけえなてぃがやいびいらあ=ですが、みんな豊かになってしまったためなのか、 非丁寧文は「ですが~、けえなてぃがやら」。
「抜ぎ走い」する人ん居らんなゆしとぅまじゅん=「抜ぎ走い」する者もいなくなると共に、
「抜ぎ走い」んでぃゆる言葉ん使あらんなとおいびいん=「抜ぎ走い」という言葉も使われなくなりました。非丁寧文は「~言葉ん使あらんなとおん」。
調びてぃ見あびたれえ=調べてみますと、  非丁寧文は「調びて見じいねえ」。
うぬ言葉あ『沖縄語辞典』ぬんかいや=その言葉は『沖縄語辞典』には、
載てえ居いびらん=載っていません。非丁寧文は「~居らん」。
今あ家んじん、映画あ見だりゆい=今は家の中でも映画は見れるし、
ましやいびいんやあさい=いいもんですねえ。非丁寧文は「ましやあさい」。

 本土(やまと)お今度(くんど)お、あいゆかんぬ雪年(ゆちどぅし)やいぎさいびいん。
 あまくまぬぬ道於(をぅ)とおてぃ、車ぬ立ちぷんぱいし、またあまくまぬ村ぬ孤立さあに、物(むぬ)ん届(とぅどぅ)きゆる事んままならな、援(たし)き難(ぐり)さなとおんでぃぬ事(くとぅ)やいびいん。 うぬ雪ぬ重(んぶさ)なかい、普通ぬ家ぬ上(ゐい)びけえのおあらん、体育館ぬ屋根(やあぬゐい)迄(までぃ)、崩(くず)りゆんでえ、うすまさいびいん。沖縄や台風(ううかじ、てえふう)ぬ備わいとぅしち、昔(んかし)からぬ赤瓦(あかがあら)やみやあに、いいくるコンクリート屋根なとおいびいくとぅ、雪ぬ積(ち)むてぃん、支(ちけ)え無(ね)えらんでぃ、思(うみ)いやさびいしが…?。本土ん諸(むる)、いっそうから、コンクリート屋根なすしえ、ましえあいびらんがあら。
 雪景色え沖縄から見じいねえ、美らむんやいびいしが、じまま降ゆるむんどぅんやれえ、恐(うとぅる)しむんやいぎさん。

 温暖化んでぃる言(い)ちゃる、何(ぬう)がなとおいびいらあ。うりん又、温暖化ぬ表(あらわ)りぬ一(てぃ)いちがやいびいら。
 やいびいしが、くぬ沖縄(うちなあ)や、でえじなぬ温年(ぬくどぅし)やいびいん。今(なま)までえ、本土ぬ風邪(はなしち)かかいねえ、沖縄や鼻放(はなふぃ)ゆんでぃ言(い)ちょおびいたしが、今度お、あねえあいびらんむん。今から後(あとぅ)ん、あんがやびいら。
  
【語句】
本土お今度お、あいゆかんぬ雪年やいぎさいびいん=本土は今年は相当な雪年のようです。非丁寧文は「~やいぎさん」。「juci(ゆち=雪)」は『沖縄語辞典』には「あられ」とありますが、ここでは「雪(ゆき)」の意味で使います。以下同じ。「あいゆかん=とても」は『沖縄語辞典』にはありません。中南部では多く使われています。
あまくまぬぬ道於とおてぃ、車ぬ立ちぷんぱいし=あちこちの道路で車両が立ち往生し、 
またあまくまぬ村ぬ孤立さあに=また、あちこちの集落が孤立して、
物ん届きゆる事んままならな=物資を届ける事もままならず、
援き難さなとおんでぃぬ事やいびいん=救援しづらい情況だという事です。非丁寧文は「~事やん」。
うぬ雪ぬ重なかい、普通ぬ家ぬ上びけえのおあらん=その雪の重みで、民家だけでなく、
体育館ぬ屋根迄、崩りゆんでえ、うすまさいびいん=体育館の屋根迄崩れるとはひどいです。非丁寧文は「~うすまさん」
沖縄や台風ぬ備わいとぅしち=沖縄では台風の備えとして、
昔からぬ赤瓦やみやあに=伝統的な赤瓦をやめ(意訳)
、いいくるコンクリート屋根なとおいびいくとぅ=殆どコンクリート屋根になっていますので、非丁寧文は「~屋根なとおくとぅ」。
雪ぬ積むてぃん、支え無えらんでぃ=雪が積もっても、大丈夫だと、
思やさびいしが…=思いはしますが…。非丁寧文は「思いやすしが」。「思やびいしが」でも可。
本土ん諸、いっそうから=本土もすべて、軒並み、
コンクリート屋根なすしえ、ましえあいびらんがあら=コンクリート屋根にしてもよいではないだろうか。非丁寧文は「~ましえあらんがあら」。
雪景色え沖縄から見じいねえ=雪景色は沖縄からみれば、
美らむんやいびいしが=美しいものですが、非丁寧文は「美らむんやしが」。
じまま降ゆるむんどぅんやれえ=降り放題なら、「じまま」は「自儘」の字の如く「わがまま」の意味ですが、地方では転じて、「思いっきり」「とても」の意味があります。本部あたりでも同様な意味で使われているようです。『沖縄辞典』にはその意味では無いので、問い合わせ等がありますが、同辞典は首里語であり、地方語との意味のずれ(範囲)もある他、発音は士族(本土の武家・公家に相当)発音優先)となっており、また伝統的行事等の記述も地方と異なる部分もあり、地方からは満足のいくものではありません。逐一『沖縄語辞典』には載ってない旨記述しなければならない情況です?
恐しむんやいぎさん=恐ろしいもののようです。非丁寧文は「恐しむんやん」。
温暖化んでぃる言ちゃる、何がなとおいびいらあ=温暖化とは言うものの、一体どうなっているでしょうか。非丁寧文は「~何がなとおらあ」。
うりん又、温暖化ぬ表りぬ一いちがやいびいら=それも、又温暖化現象のひとつなのでしょうか。非丁寧文は「~一ちがやら」。
やいびいしが、くぬ沖縄や=ですが、この沖縄は、非丁寧文は「やしが」。
でえじなぬ温年やいびいん=おおいに暖冬です。非丁寧文は「温年やん」。「でえじな(大変な)」も『沖縄語辞典』にはありませんが、「大事な」から転じて使用されている地方語です。
今までえ、本土ぬ風邪かかいねえ=今までは、本土が風邪をひくと、
沖縄や鼻放ゆんでぃ言ちょおびいたしが=沖縄はくしゃみをすると言っていましたが、非丁寧文は「言ちょおたしが」。
今度お、あねえあいびらんむん=今年はそうではないようです(意訳)。非丁寧文は「~あねえあらんむん」。
今から後ん、あんがやびいら=これから先もそうなのでしょうか。非丁寧文は「~あんがやら」。

 大人(うふっちゅ)なてぃからぬ冬(ふゆ)お、実(じゅん)に、温(ぬく)くけえなとおんでぃ思(うみ)やびいん。
 童(わらび)ぬばすお、学校(ぐぁっこう)んかい行ちゅる朝あ、吹(ふ)ちゅる息(いいち)ん白(しる)くなゆるあたい、寒(ふぃい)さいびいたん。やいびいしが、どぅくだら、貧相(ふぃんすう)なやあに、夜(ゆる)寝(に)んじゅるばすぬ被(かん)じ物(むん)や、今(なま)考(かんげ)いねえ、戦争避難民(いくさぬふぃんぎんちゅ)やかん、なてえ居(をぅ)いびらんたん。
 床(ゆか)ぬ上(ゐい)や、筵(むしる)一枚(いちめえ)ちびけん。胴(どぅう)んかい被(かん)しゆしえ、米軍用(アミリカむん)ぬ毛布(きっとぅ)とぅ同(い)ぬ防寒コートびけんどぅあいびいたる。親(をぅや)ぬ話なかいや戦前(いくさめえ)や、なあふぃん、良(ゆ)たさる被じ物ぬあたんでぃぬ事(くとぅ)やいびいん。やいびいしが、戦ぬばすんじ、諸(むる)燃(め)えてぃ無(ね)えらんなたんでぃぬ事(くとぅ)。
 あんし、我っ達(たあ)、両親(たいぬをぅや)あ冬ぬ夜お寝んじゅる前(めえ)んじ、必(かんな)じ、「諸(むる)、たっ付かるうし寝(に)んでぃよ」んでぃ言(ゆ)しが口癖(くちぐし)なとおいびいたん。
 うぬ米軍用毛布ん防寒コートん、朝起(う)きいねえ、蚤(いんぬみ)ぬぐぁさないそおいびいたん。起きてぃ、ちゅてえや、兄弟姉妹(ちょうでえうとぅだんざ)共(とぅむ)に、蚤、親指(うふいいび)ぬ爪(ちみ)さあに、しぴらち、遊(あし)どおいびいたん。蚤え夜ながとぅ腸(わた)ぬ満(みい)人(ちゅ)ぬ血(ちい)、いっぺえ吸(すう)うとおいびいくとぅ、逃(ふぃん)ぎゆすん鈍(どん)なさぬ、しぴらさりいねえ、親指ぬ爪え、いっぺえ、赤血(あかちい)し染(す)まとおいびいたん。やびいびしが、うりん洗(あら)らんぐうとぅう、学校んかい行(ん)じ、友達(どぅしんちゃあ)とぅ、赤爪見(ちみみ)し合(ええ)そおびいたん。

【語句】
大人なてぃからぬ冬お、実に=大人になってからの冬はほんとうに、
温くけえなとおんでぃ思やびいん=暖かくなってしまったと思います。非丁寧文は「~思ゆん」。
童ぬばすお、学校んかい行ちゅる朝あ=子供の頃は、学校に登校する朝は、
吹ちゅる息ん白くなゆるあたい、寒さいびいたん=吐く息も白むほど、寒かったです。非丁寧文は「~寒さたん」。
やいびいしが、どぅくだら、貧相なやあに=ですが、あまりにも貧乏であり、「貧相」は「貧乏」の意味に転化。
夜寝んじゅるばすぬ被じ物や=夜寝る場合の被り物は、
今考いねえ、戦争避難民やかん、なてえ居いびらんたん=今考えると、戦争難民よりひどかったです。非丁寧文は「~居らんたん」。
床ぬや、筵一枚びけん=床の上は、茣蓙一枚だけ。
胴んかい被しゆしえ=体に被せるのは、
米軍用ぬ毛布とぅ同ぬ防寒コートびけんどぅあいびいたる=米軍用の毛布と同防寒コートだけでした。非丁寧文は「~びけんどぅやたる」。
親ぬ話なかいや、戦前や、なあふぃん=親の話によれば戦前はもっと、
良たさる被じ物ぬあたんでぃぬ事やいびいん=良い被り物があったと事です。非丁寧文は「~事やん」。
やいびいしが、戦ぬばすんじ=ですが、戦争のときに、非丁寧文は「やしが」。
諸燃えてぃ無えらんなたんでぃぬ事=全部、燃えてなくなったとのこと。
あんし、我っ達、両親あ冬ぬ夜お=それで、私たちの両親は、冬の夜は、
寝んじゅる前んじ、必じ=寝る前に、必ず、
「諸、たっ付かるうし寝んでぃよ」=「みんな、くっつきあって、寝るんだよ」 ちなみに、「たっちかるう」という句は『沖縄語辞典』にはありません。「たちかゆん(くっつく)」からの派生語です。
んでぃ言しが口癖なとおいびいたん=というのが口癖になっていました。非丁寧文は「~口癖なとおたん」。
うぬ米軍用毛布ん防寒コートん=その米軍用の毛布も防寒コートも、
朝起きいねえ、蚤ぬぐぁさないそおいびいたん=蚤がうようよしていました。非丁寧文は「~ぐぁさないそおたん」。「蚤」は地方では「いんぬみ」であるが『沖縄語辞典』にはない。首里語の「ぬみ」が載る。
起きてぃ、ちゅてえや、兄弟姉妹共に='起きて暫くは、兄弟姉妹共に、
蚤、親指ぬ爪さあに、しぴらち、遊どおいびいたん=蚤を親指の爪で潰して遊んでいました。非丁寧文は「~遊どおたん」。
虱や夜ながとぅ腸ぬ満人ぬ血=蚤は夜通し、腹いっぱい人間の血を
いっぺえ吸うとおいびいくとぅ=いっぱい吸っていますので、 非丁寧文は「~吸うとおくとぅ」。
逃んぎゆしん、鈍なさぬ=逃げるのも鈍く、
しぴらさりいねえ、親指ぬ爪え=潰されると、親指の爪は、
いっぺえ、赤血し染まとおいびいたん=いっぱい、赤い血で染まっていました。非丁寧文は「~染まとおたん」。
やびいびしが、うりん洗らんぐうとぅう=ですが、それを洗うことなく、 非丁寧文は「やしが」。
学校んかい行じ、友達とぅ=学校に行き、友達と
赤爪見し合そおびいたん=赤い血を見せ合っていました。非丁寧文は「~見し合そおたん」。

 くぬ前(めえ)、かたがたテレビぬ特集番組見(ん)ちょおいびいたれえ、ある本土(やまとぅ)ぬ写真家が民家(ちゅぬやあ)訪(たじ)にやあに、「今日拝(ちゅううが)なびら」んでぃ挨拶(いぇえさち)そおる場面ぬあいびいたん。
 いいくる沖縄(うちなあ)んじえ、人(ちゅ)ぬ家(やあ)回(みぐ)てぃ行(い)ちゅるばあや、首里(しゅい)んじやてぃん、「来(ち)ゃあびら(さい、たい)」んでぃる言(い)ゃびいしがんでぃ思(うむ)やびたん。うぬ事(くと)お、側(すば)なさびら。
 
 やいびいしが、ちくずく、考(かんげ)えいねえ、くぬ「来ゃあびら」んでぃゆる言葉(くとぅば)ん面白(うむしる)むんやんでぃ、思(うむ)やびいん。「来ゃあびら」や丁寧語(ししくとぅば)やいびいしが、くりが普通語(なみくとぅば)あ無(ね)えやびらん? んでぃ、言(ゆ)しやか、くりが普通語やる「来(く)ら」んでえや、むさっとぅ、聞(ち)ちぇえ見(な)あびらん。やいびいくとぅ、無えらんしとお同(い)ぬむんやいびいん。
  
 「来ゅうん」 くるが不規則動詞やいびいくとぅ、厄介(やっけえ)やびいん。未然形ぬ「来ら」や否定形ぬ「くらん」や作(ちゅく)らな、否定文や「くうん」でぃちどぅやびいる。

 何(ぬう)んでぃちん、ふぃるましむんやしえ、日本語んかい直(のお)しいねえ、「来ましょう」んでぃちなゆる事(くとぅ)やいびいん。人ぬ家んかい訪にやあに、「きましょう」んでぃち、挨拶んでえしいねえ、異風(いふう)なあやいやさびいしが、くりんまた言葉ぬ慣りから生じたる慣用句どぅやいびいるむんぬ、ぬびてぃ、うたびみせえびり。

 うちなあぐち、なんぞお、使(ちけ)え慣(な)りらん人があ、んちゃ、「今日拝なびら」んでぃち、けえ言(い)いがすらん分かやびらん。

【語句】
くぬ前、かたがたテレビぬ特集番組=この前、たまたま、テレビの特集番組を
見ちょおいびいたれえ=見ていましたら、 非丁寧文は「見ちょおたれえ」。
ある本土ぬ写真家が民家訪にやあに=ある本土の写真家が民家を訪ね、
「今日拝なびら」んでぃ挨拶そおる場面ぬあいびいたん=「今日拝なびら」と挨拶をしている場面がありました。非丁寧文は「~場面ぬあたん」。「今日拝なびら」は「こんにちは」?。
いいくる沖縄んじえ=およそ、沖縄では、 「おきなわ」は「うちなあ」の開音。
人ぬ家回てぃ行ちゅるばあや=人の家を訪ねていく場合は、
首里んじやてぃん=首里における場合でも
「来ゃあびら(さい、たい)」んでぃる=「来ちゃあびら(さい、たい)」と、 「さい」は男性が「たい」は女性が文末に付ける敬語。但し「たい」を女性語とするのは元来、首里那覇の都市部だけ。
言ゃびいしがんでぃ思やびたん=言うのだがと思いました。非丁寧文は「~思たん」。
うぬ事お、側なさびら=その件はさて置きます。非丁寧文は「~側なさ」。「すばなすん」は「さておく」。
やいびいしが、ちくずく、考えいねえ=ですが、つくづく考えれば、 非丁寧文は「やしが」。
くぬ「来ゃあびら」んでぃゆる言葉ん=この「来ゃあびら」という言葉も
面白むんやんでぃ、思やびいん=面白いもんだと思います。非丁寧文は「~思ゆん」。
「来ゃあびら」や丁寧語やいびいしが=「来ゃあびら」は丁寧語ですが、非丁寧文は「~丁寧語やしが」。「ししゆん」は「丁寧に(~を)する」。
くりが普通語あ無えやびらん?=これの普通語はありません?
んでぃ、言しやか=というより、
くりが普通語やる「来ら」んでえや=この普通語である「来ら」などというのは、
むさっとぅ、聞ちぇえ見あびらん=まったく、聞いた事がありません。非丁寧文は「~見(ん)だん」。
やいびいくとぅ、無えらんしとお同ぬむんやいびいん=だから無いのも同然です。
「来ゅうん」 くるが不規則動詞やいびいくとぅ=そもそも「来ゅうん」自体が不規則動詞なのであるから、 非丁寧文は「~やくとぅ」。
厄介やびいん=厄介です。非丁寧文は「厄介やん」。
未然形ぬ「来ら」や否定文ぬ「くらん」や作らな=未然形の「来ら」は否定文「くらん」は作らず、
否定文や「くうん」でぃちどぅやびいる=(その)否定文は「くうん」としかなりません。非丁寧文は「~どぅんなゆる」。
何んでぃちん、ふぃるましむんやしえ=何と言っても変なのは、
日本語んかい直しいねえ=日本語に訳すると、
「来ましょう」んでぃちなゆる事やいびいん=「きましょう」となる事です。非丁寧文は「~事やん」。
人ぬ家んかい訪にやあに=人の家を訪ね来て、
「きましょう」んでぃち、挨拶んでえしいねえ=「きましょう」と挨拶したらば、
異風なあやいやさびいしが=変ではありますが、 非丁寧文は「~やいやすしが」。
くりんまた慣用句どぅやいびいるむんぬ=これもまた言語習慣からきた慣用句なのでありますから、 非丁寧文は「~どぅやるむぬ」。
ぬびてぃ、うたびみせえびり=寛容に御願いいたします。非敬語は「ぬびて呉り」又は「ぬびてぃ取(とぅ)らし」。
うちなあぐち、なんぞお、使え慣りらん人があ=沖縄語をあまり使い慣れない人なら
んちゃ、「今日拝なびら」んでぃち=なるほど、「今日拝なびら」と、
けえ言いがすらん分かやびらん=言ってしまうのかも知れません。

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